『おとうさんとぼく』紹介
岩波少年文庫と言えば『星の王子様』『モモ』『ドリトル先生シリーズ』をはじめとした海外古典児童文学の翻訳作品や
『ガンバの冒険シリーズ』『坊ちゃん』『蜘蛛の糸』『寺田虎彦エッセイ集』など日本の名作など、
選りすぐりの傑作・名作を世に送り出している老舗児童書レーベルです。
岩波少年文庫からは多くの名作が発表されていますが、
岩波少年文庫から漫画が発売されていることをご存じでしょうか。
それが『おとうさんとぼく』です。
父子のゆかいな日常を描く
「冒頭が漫画」などではなく、解説部分を除き全編が漫画になっています。
しかも、今の時代はほとんど見られないサイレント漫画です。
「どんなことを話しているんだろう」と想像しながら読んでみてください。
このお話は岩波少年文庫の100ページ目にあたります。
(パブリックドメインになっているので、そのまま引用しています)
氷の上でスケートをしていたら、転んで氷が割れ、水の中に落ちてしまいます。
しかし、二人は氷の中で魚を捕まえ、持ち帰ります。
『おとうさんとぼく』はタイトルのとおり、父と子の物語です。
セリフがないのに、楽しそうな会話が聞こえてくるような躍動感があります。
ふたりは、たとえハプニングが起きても、それをユーモアに変えていきます。
厳しい現実の中で、楽しい空想を楽しんだ時代
『おとうさんとぼく』は全体主義の中で人間性をおしつぶされていた1人1人が、ほんとうの人間に出会えてほっと一息つけるオアシスでした。
e. o. プラウエン.おとうさんとぼく(タイトル翻訳 上田真而子).岩波書店.2020,p.305
『おとうさんとぼく』は1934年、ドイツで発表されました。
つまりこれから第二次世界大戦がはじまろうとしている時代に生まれた作品です。
当時のドイツはナチスが台頭していた時代。本の出版に厳しい制限がかけられ、
風刺など描いていたら連行されてしまう時代でした。
自由に本が書けない・読めない時代の中
ユーモアたっぷりに、自由に・のびのびと暮らす親子を描いた漫画『おとうさんとぼく』
この漫画が発表され、人々の間で愛されるようになった背景は、
巻末の訳者上田真而子先生による解説、
『飛ぶ教室』でおなじみのエーリヒ・ケストナー先生のエッセイをぜひお読みください。