これからの時代、
文系の人も理数系の教養を、理系の人も文系の教養を学ぶ必要があります。
普段得意としない分野の知識を得ることで、
- 教養になる
- 広く深い知識が得られる
- 問題解決・アイデア発想がより柔軟になる
などのメリットがあります。
逆に言えば、専門分野のことばかり勉強していたら、広い視野で物を考えられなくなります。
今回紹介する物理学者・寺田寅彦先生の『柿の種』です。
このエッセイは、
「日常から思いがけない発見をする(セレンディピティ)ことの大切さ」
「科学を理解するには論理的・合理的な考えだけでなく、素朴な疑問・人間の感性も必要」
ということを、わたしたちに教えてくれます。
『柿の種』はこんな本
物理学者・寺田寅彦先生のエッセイ
日常の身近なところから科学を発見する名エッセイ
『柿の種』は、物理学者・寺田寅彦先生が
雑誌などに載せた短文を集めたエッセイです。
日常の中に発見したもの、見聞きしたものの感想、
関東大震災の記録、病気になってからの記録などが、
寺田先生ありのままの文体で記されています。
眼は、いつでも思った時にすぐ閉じることができるようにできている。
寺田寅彦.柿の種.岩波書店.2022,p.28
しかし、耳のほうは、自分では自分を閉じることができないようにできている。
なぜだろう。
俳句・絵にも傾倒 幅広い興味
寺田先生のエッセイにはときどき、俳句が登場します。
これは『柿の種』でわたしが一番好きな句です。
淡雪や通ひ路細き猫の恋
寺田寅彦.柿の種.岩波書店.2022,p.125
寺田先生が飼っているメス猫「三毛」のもとに通っていた、
あるオス猫を見て詠んだ詩です。
科学者も、猫を人間と同じように恋するものと捉え、歌にしたところが、
当時『柿の種』を読んでいたわたしには新鮮にうつり、親しみを感じました。
このように寺田寅彦先生は、芸術にも傾倒しています。
『柿の種』は、科学の目だけでなく、芸術の目も持った科学者のエッセイです。
『柿の種』を読むと、この社会には完全に独立したものなどなく、
あらゆる要素が複雑に組み合わさって社会はできているんだ、と考えさせられます。
日常の不思議、人間の抱く感情、感覚から、すべての科学は始まったのではないか。
そう思わずにはいられません。
岩波文庫入門におすすめ◎
岩波文庫は名著も多いですが、
アカデミックなので本に慣れていない人にとっては難しく感じます。
『柿の種』は、日常をテーマにした文が多いので、親しみやすいのが特徴です。
大正時代のエッセイなので、今の時代と若干異なる部分はありますが、
題材が日常や心の中をテーマにしたものばかりなので、共感できる部分も多いと思います。
文字もそこまで多くないので、岩波文庫に挑戦してみたい人にもおすすめです。
おわりに
以上が、寺田寅彦先生『柿の種』の紹介になります。
気になった方は読んでみてください。
本記事のまとめ
・『柿の種』は、物理学者・寺田寅彦先生のエッセイ
・日常から科学を見出すことから、芸術分野まで言及
・内容が分かりやすいので、岩波文庫入門におすすめ
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