目の見えない人、視覚障害者の人たちは、普段どのように世界を見ているのか
気になったことはありませんか?
情報のほとんどを視覚に頼っている健常者にとって、
目が見えない世界がどんなものか、なかなか想像しにくいものです。
たしかに、物の場所とかは目で探すし、
本だって目で読むことが多いね。
目の見えない世界、どう過ごすのか想像つかないな…
今回紹介する本は『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本。
この本は、著者で東京工業大学教授・伊藤亜紗教授が、数名の視覚障害者の人への取材をもとに、
見えない人がどのように世界を「見て」いるのか、追体験する、
「そっちの世界も面白いね!」という目で見てみることで、
視覚障害者のことを知ろう・学ぼうという本です。
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』紹介
見えない人の視点からものを見ること
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』では、
見えない人がどうやって空間を把握しているか、どうやって感覚を掴んでいるかなど、
視覚障害者の「見え方」について書かれています。
著者の伊藤亜紗教授によると、
視覚障害者は目で得られない情報を聴覚や触覚などの他の感覚で補っているそうです。
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の本文ではこのことを、
「4本の脚に一本足りない状態の椅子」ではなく
「足の配置を変えて、三本脚で立っている椅子」と例えています。
このたとえは目からウロコ!
目が見えないことは、目を覆うこと、目をつぶることとは違います。
目の見えない人は、視覚以外の感覚を活用しています。
単に目隠しすれば、視覚障害者の生活を追体験できるわけではないということです。
好奇心を持って語る「身体障害者」について
「健常者ができて、障害者ができないことがある、だから障害者は困っている」
「だから健常者はこうやって障害者を助けましょう」
障害者を語る多くの本は、健常者から障害者への「支援」について書かれています。
このように、
健常者が障害者に対して「何かしてあげたい」と思いやる気持ち、
わたしは悪いことではないと思います。
ところが『目の見えない人は世界をどう見ているのか』では、視覚障害者について
「このように支援しましょう」という福祉の側面ではほとんど語られていません。
「へえ、そんなやり方もあるのか!」というヒラメキを得たような感触。「面白い」の立場にたつことで、お互いの違いについて対等に語り合えるような気がしています。
伊藤亜紗.目の見えない人は世界をどう見ているのか.光文社.2023,p.86
「見えない人はこうやって世界を見ているんだ、面白いね」という扱いになっています。
一見失礼に見えますが、この「面白い」が、実は大事なことなんです。
さまざまな事情を抱える人本人の立場に立って考えることは、
インクルーシブな社会を目指すヒントにもなります。
「面白い」の立場に立つこととはどういうことか、
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』を通じて、体験してみてください。
ヨシタケシンスケ先生の絵本『みえるとかみえないとか』
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』をもとに作られた絵本があります。
ヨシタケシンスケ先生の『みえるとかみえないとか』です。
「地球人と宇宙人」を通じて、人と人との違いを考える内容になっています。
伊藤教授も、この絵本に「そうだん」としてかかわっています。
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の内容を、
子どもと一緒に考えてみたい人におすすめです。
まとめ
以上が伊藤亜紗教授の『目の見えない人は世界をどう見ているのか』紹介になります。
本記事のまとめ
・『目の見えない人は世界をどう見ているのか』は、身体障害者の「見え方」について学ぶ一冊
・「三本脚の椅子」という見方
・見える人、見えない人の違いを「面白く」知ること