児童書は子どもたちにとって楽しい娯楽のひとつであり、
大人にとっては心のふるさとになります。
小さい頃読んだ本って、
不思議と今も覚えてることが多いよね
子どもの頃、自分で最初に読んだ本を覚えていますか?
最後に読んだ児童書は何か覚えていますか?
読書の秋です。
しばらく本から離れていた人も、久々に児童書を読んでみませんか?
今回は岩波少年文庫から、おすすめの18冊を簡単にですが紹介します。
一部の本は関連本・メディアミックスも紹介しています。
また、最後の方に岩波少年文庫からお気に入りの一冊を探す参考になる3冊も紹介しています。
次の一冊を選ぶ参考にしてみてください。
この記事で紹介している岩波少年文庫の本は、
大人になって読み返した本もありますが、小学生以来読んでいない本もあります。ご了承ください。
岩波少年文庫 おすすめ18冊
クリスマス・キャロル
『オリバー・ツイスト』『二都物語』などで知られる、
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズ先生による、クリスマスのお語です。
勧善懲悪ではなく、いじわるな人が優しい心を取り戻すお話は、
今の時代はちょっと嫌がられる傾向にありますが、わたしは好きです。
読んだあと、心が温かくなります。
クリスマスに読みたい・読み返したい一冊です。
科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集
"知の巨人"外山滋比古先生も子ども時代夢中になった寺田寅彦先生の、
児童向けに出版されたエッセイです。
寺田先生は明治時代の科学者ですが、
中高生でも読みやすいようにこの本は作られています。
身近なものに対する観察の大切さがわかります。
身の回りのモノへの興味が芽生え、理科が好きになれるかもしれません。
大人の方は、こちらもおすすめ。『柿の種』という岩波文庫のエッセイです。
一節一節が短めなので、じっくりと読んでみてください。
こちらの本も『科学と科学者のはなし』に通じるものがあります。
星の王子さま
『星の王子さま』、いいタイトルですよね。
2006年に権利が切れてから様々な出版社から翻訳が出版されていますが、
このタイトルは岩波書店版、内藤濯先生の訳で初めて使われたものです。
原著のタイトルは『Le Petit Prince』、直訳すると『小さな王子』です。
この本が今でも愛される理由は、物語の本であると同時に、
人生についての暗喩が童話風に描かれた本だからなのかな、と思っています。
内容についてわたしは何も言うことができません。
この本に書かれている内容をじっくりと味わってください。
星の王子さま 漫画版(サンクチュアリ出版)もあります
星の王子さまが気に入った方は、サンクチュアリ出版から出ているコミック版もおすすめです。
こちらもあわせておすすめします。訳している方は集英社版の翻訳を出している池澤夏樹先生です。
原作者の遺族が認めたコミックなので安心です。
ファーブルの昆虫記
昆虫の観察を記録した、昆虫記の名作です。
有名なフンコロガシ(オオタマオシコガネ)の話は、上巻にあります。
昆虫が好きになったきっかけになった人も多いんじゃないかな
あまり自然と触れ合う場所がないと、虫を身近に感じる機会は少なくなります。
わたしは『ファーブルの昆虫記』や昆虫図鑑で虫の種類をいくつか覚えました。
昆虫は形態も生態もさまざまで、
こんな不思議な生き物が実在していたんだ!と感動したものです。
今の時代はネットで生き物についてたくさん知ることができますが、
本で虫のことを知るのも、面白いですよ。
宝島
手書きの宝の地図、まえがきのわたしたちに呼びかけるような文章、荒々しい男たち、
どれも大人っぽい魅力があってかっこいい。
『宝島』は、常に死の香りがするまさに「危険を冒す=冒険」の話です。
冒険物語が好きなら、一度は読んでおきたい一冊です。
わたしは子どもの頃、本編を読む前に「まえがき」を何度も読み返していました。
【ガンバ三部作】「冒険者たち」「グリックの冒険」「ガンバとカワウソの冒険」
この、斎藤惇夫先生手掛けるこの三作は、連続した世界観になっています。
岩波少年文庫が出る前に出た単行本が発売された順に読むのもいいですし、
時系列順に読むのもいいです。
時系列順→
「冒険者たち」「グリックの冒険」「ガンバとカワウソの冒険」
発売順(文庫本ではなく単行本版が発売された順)→
「グリックの冒険(1970)」「冒険者たち(1972)」「ガンバとカワウソの冒険(1982)」
個人的には時系列順に読むことをおすすめします。
ただし、「ガンバとカワウソの冒険」は「冒険者たち」の後に読んでください。
「ガンバとカワウソの冒険」は「冒険者たち」のネタバレを含みます。
冒険者たち
ドブネズミ「ガンバ」の旅立ちの話であり、三作の中では一番有名な話で、
アニメ化・舞台化・映画化もされ、幅広い世代から愛されている名作です。
ガンバたちの敵である白イタチの「ノロイ」は、いまだに最強の敵だと思っています。
児童文学であんなに狡猾で恐ろしい敵を、わたしは他に知りません。
喋る動物たちの冒険物語ということでファンシーなイメージが先行しますが、
中身は熱くて骨太な冒険小説です。普通にキャラクターが死ぬぐらいシビアな世界観です。
何度かアニメ化されている
原作のガンバたちは写実的な動物なのに対し、
昭和アニメ版、CG版どちらもアニメらしくデフォルメされています。
アニメ版の『ガンバの冒険』は公式YouTubeで一部を見ることができます。
原作に比べてガンバがやんちゃなイメージです。ちょっとはしゃぎすぎな気もします。
このアニメのノロイは、原作と別ベクトルの恐ろしさを見せてきます。
当時の子どもたちはトラウマになったとか。
また、平成になってCG版の映画が作られました。
昭和アニメのガンバのアレンジというより、「『冒険者たち』のアニメ化」と言ったほうがいいです。
原作ファン的には「とあるキャラクターの死」を描いてくれたところがうれしい。
グリックの冒険
斎藤惇夫先生のデビュー作。
この作品のみ『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』とは主人公が違い、
グリックというシマリスが主人公です。
このお話に、途中でガンバが出てきます。
このガンバは、何度か冒険を経てたくましくなったガンバで、グリックにとって頼もしい存在です。
「冒険者たち」を読んだあとと読む前では違った印象を受けます。ガンバ、かっこいいです。
ガンバとカワウソの冒険
こちらは「冒険者たち」の続編です。
「冒険者たち」の結末を踏まえての話なので、ネタバレにご注意ください。
もちろん単体で読んでも話の流れは分かるように書かれています。
いくつもの冒険を経てすっかりたくましくなったガンバたちですが、
とあるネズミの女性、そして生き残っているかもしれないというカワウソの行方を追う旅ですが、
道中でイタチよりもおそろしい敵と戦うことになります…。
チポリーノの冒険
勇気ある冒険小説として読むことも、支配者に対する風刺物語として読むこともできます。
野菜たちが暮らす国を通じて、作者の平和に対する想いが込められています。
この本、なんといっても挿絵がいいんです。
表情が豊かで躍動感があり漫画的ですが、しっかり描き込まれていて安っぽくない。
敵もいやなやつですが、憎めないのは挿絵のおかげですね。
ジブリの監督宮崎駿監督も、『チポリーノの冒険』の挿絵に影響を受けていると明言しています。
お話はもちろんおもしろいのですが、さし絵がとくに上手で愉快で、とても楽しめます。トマト騎士とかちびレモン兵とか、ぼくは大好きになって、絵の描き方でずい分影響を受けました。
宮崎駿.本へのとびら――岩波少年文庫を語る 岩波新書(新赤版)1332.岩波書店.2023, p.4
モモ
「本ってこんなに面白いんだ!」
話のスケールの大きさに、思わずそうつぶやいた日のことをよく覚えています。
わたしが読書好きになったきっかけになった、思い入れが深い本です。
ミヒャエル・エンデ作品集 7冊セットもあります
エンデは他にも名作を出版しています。
7冊合わさったセットも発売されているので、まとめ買いやプレゼントにどうぞ。
まだ全部読んでいないのでそれぞれの本のレビューは控えますが、きっといい本だと思います。
やかまし村の子どもたち
この本を読んでいると、子どもの頃楽しく遊んでいたころのことを思い出します。
安心して遊びに没頭できる環境で、のびのびと遊ぶ子どもたちの姿を描く名作です。
こちらの記事もどうぞ。
長くつ下のピッピ
表紙に「世界一つよい女の子」と書かれている通り、この本の主人公ピッピはつよい女の子です。
「やかまし村の子どもたち」と同じ作者の本ですが、
こちらはかなり破天荒でハチャメチャです。
ピッピは馬を軽々と持ち上げ乗りこなし、大男を倒したり、現実離れしたパワーの持ち主。
風変わりな格好をして、言動も現実離れしていて、性格も破天荒です。
わたしは小学生の当時、
女の子がこんなに強いめちゃくちゃな設定でもいいんだと勇気をもらいました。
今でこそ「精神的に自立した、身も心も強い女の子のキャラクター」は受け入れられていますが、
この本が発売された当時は珍しかったのではないでしょうか。
挿絵を担当されている、画家の桜井誠先生の絵も、作品に魅力を与えています。
素朴なタッチで描かれた絵にピッピの堂々とした立ち姿は、まさしく「つよい女の子」です。
ドリトル先生航海記
動物とお話できるゆかいでおおらかな先生と、
まるで一緒に旅をしているかのような名作です。
シリーズはたくさんあるのですが、この『航海記』が一番おすすめです。
こちらの記事もどうぞ。
まぼろしの小さい犬
作家・小川洋子先生による解説があります。
正直小川先生の解説が読みたくて買ったのですが、内容もよかったです。
少年期の心情が非常にリアルに伝わってきて、胸に来ます。
「自分だけしか見えない何か」を子どもの頃想像していたこと、ありませんか?
わたしはあります。
おとうさんとぼく
この本は文字がほとんどないので、低学年から楽しめます。
文字がほとんどない、ドイツ生まれのサイレント漫画です。
何気ない日常からハチャメチャな旅まで、父子がユーモアたっぷりにすごす話です。
漫画ですが、ただ楽しいだけではありません。
時代背景を知ると、もっとこの漫画を好きになります。
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くまのプーさん
この本を読むと、子どもの頃あそんだぬいぐるみのことを思い出して、じーんとなります。
石井桃子先生の訳も絶妙です。
お父さんのやさしさが出ている地の文、プーやコブタの台詞のおかしみ、
「炉端の前」がぴったりな、あたたかい文章は、石井先生の魔法です。
ディズニーのくまのプーさんも非常に人気が高い作品ですが、
原作のプーさんの挿絵はぬいぐるみらしさ、動物らしさ全開で、とてもかわいらしいです。
この本にはディズニーでおなじみのティガー(岩波少年文庫版ではトラー)はまだ出てきません。
続編「プー横丁にたった家」に登場します。
まだ読んでないのでレビューはできませんが、たぶんいい本です。
ティガーのファンは違いを楽しんでみてください。
特にラビット(岩波少年文庫ではウサギ)がかわいらしくなっていてびっくりしました。
地底旅行
あまり知名度はないですが、ヴェルヌの最高傑作のひとつです。
ヴェルヌ先生は「旅立ちのワクワク感」を描くのが本当に上手い作家だと思います。
この本は旅に出てから、道中も本当に面白いです。
冒険小説マニアなら絶対に読んでおくべき一冊です。
羅生門
教科書で有名な芥川龍之介の12作、岩波少年文庫でも読むことができます。
表題になっている羅生門、杜子春はもちろん、トロッコ、鼻、芋粥などの有名どころが読めます。
文豪の作品は、一度読んでおきたいですね。
次の一冊を探す本
次に、実際に参考にした書籍を紹介します。
ここでは紹介しきれなかった名作が、岩波少年文庫にはたくさんあります。
自分で本を選ぶ楽しさを味わうことは、読書の醍醐味でもあります。
あなただけのお気に入り、ぜひ探してみて!
岩波少年文庫のあゆみ
まずはここから。
1970年から2020までの岩波少年文庫の歴史がぎゅっとつまった一冊です。
装丁の歴史、著名な愛読者のコメントなど、ファンのための一冊といった内容。
岩波少年文庫の棚にありますが、ルビも少なく内容は大人向けです。
岩波少年文庫に込められた思いが伝わってくるよ。
谷川俊太郎さんをはじめ多くの著名人のコメントもあるんだ。豪華だね
この本を後ろのページから見始めると、発売順の目録になります。
各本のあらすじもあるので、気になる本をさがす参考になります。
本へのとびら 岩波少年文庫を語る
「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「天空の城ラピュタ」でおなじみ
ジブリの宮崎駿監督による本です。
宮崎駿監督が岩波少年文庫から50冊選んで、それぞれレビューもついています。
これだけでも読む価値は高いですが、
宮崎駿監督の読書遍歴もわかる、ジブリファンも嬉しい一冊です。
子どもの本に対する想い、いまの子どもに向けたメッセージもあり、
子どもに向けた作品をつくる情熱を感じます。
本・子ども・絵本
「ぐりとぐら」シリーズや「いやいやえん」のなかがわりえこ先生のエッセイ。
戦後、思春期の時期に岩波少年文庫に勇気をもらった話や、保育士時代の子どもとのふれあいの記憶、
また、どんな絵本・本が子どもにいい本なのか、
子どもとはどう向き合うべきなのかというアドバイスがあります。
こちらの記事もどうぞ。
気になる本がなかったら「リクエスト」してみよう
岩波少年文庫は長い歴史を持っています。
『本へのとびら』『本・えほん・子ども』自体もロングセラーで、
『岩波少年文庫のあゆみ』はそもそも今までの目録が掲載されています。
なので、今では入手が難しい本が紹介されていたりします。
書店でなかなか見られないような本もあります。
中には絶版だったり品切れだったりする本もあるかもしれません。
そんなときは復刊してほしい!とリクエストしてみるのも手です。
絶版・品切れ本の復刊をリクエストできる復刊ドットコムはこちら。
岩波書店の本もたくさんリクエストされています。
以上、岩波少年文庫のおすすめ18冊と、本選びの参考になる3冊を紹介しました。
お子さんに本を贈るときの参考に、また、大人になって読み返すときの参考になれば幸いです。
岩波少年文庫の挿絵が動いたら最高のアニメになるんだけどな、と個人的に思います。
一方で、アニメはアニメのかわいらしさがあっていいと思います。